アメリカで・・・
語らいの時間の間は、BGM代わりということで小さなボリュームでFM放送を流していた。22時半過ぎのことである。盛り上がって話していると、『ニューヨークで小型機が・・・・・・ビルに突っ込み・・・』というニュース速報を話すアナウンサーの声が聞こえてきた。「誰かが操縦を誤ってビルに突っ込んだのだろう」ということで終わり、すぐに元の話題に戻った。
しかし、しばらくして『ジャンボジェット機が・・・・・・・ビルに突っ込みました』と聞こえた。確かに『ジャンボ旅客機』と聞こえたのだ。さすがに尋常な事態ではないと、話を中断してラジオをボリュームを上げて詳しく聞いてみる。
『B767型旅客機がニューヨークのワールドトレードセンタービル(以下WTC)に突っ込み、爆発・炎上している模様です・・・』
『え〜〜〜〜!?』と一同が驚き、宿の主人は数年ぶりにテレビを点けた。電波状態が悪いのでテレビを点けていなかったそうだ。テレビの画面には、WTCに突っ込んで行くB767型機の映像が映し出されていた。見たのは2機目の旅客機。まるで映画のワンシーンのようにWTCに突っ込み爆発する。パニックとなり逃げまどう人達。映画を見ている錯覚になるが、これは紛れもない事実。現実なのだ。繰り返し流される映像を、皆信じられない表情で見る。我々だけではない。一部の地域を除いた全世界の人々が同じ事を感じたに違いない。
驚くことにすでに1機がWTCに突っ込んでおり、さらに1機がアメリカ軍の中枢であるペンタゴンに突っ込んでいたという。さらに1機がホワイトハウスかキャンプデービットに向かっているというではないか!全米では10機近くの旅客機が行方不明となっており、アメリカ空軍は飛んでいる怪しい機は撃墜する構えだ。前代未聞の出来事だ。
どうみても事故ではない。人為的に操縦してWTCやペンタゴンに突っ込んで行ったのだ。これは明らかにテロだ。後日分かったことだが、イスラム原理主義過激派が実行犯であった。飛んでいる旅客機をミサイル代わりにして、乗客もろとも目標に突っ込む・・・誰もか考えなかった手法で、アメリカ経済の中枢であるニューヨークでテロを実行したのだ。間違いなく後世の歴史に刻まれる『ニューヨーク同時多発テロ』の発生であった。
とやかくしている間に、不明機の1機が墜落した。WTCに突っ込んだ1機目の映像も流される。黒煙を噴き出して炎上し続けるWTCの生中継が写し出される。最上階付近の窓から身を乗り出して助けを求める人達。室内はかなり熱いのだろう。ビルから何かが落ちて行く。破片が落ちて行くのかと思ったら、熱さに耐えかねて飛び降りた人だった・・・ 信じられない光景を目の当たりにする。
そして・・・
2棟あるWTCが一気に崩れ落ちた。
アメリカ経済の象徴とも言うべきWTCが、1分も経たない間に崩れ落ちてしまったのだ。遙か彼方のニューヨークで起きた大事件を、テレビでリアルタイムで見ることが出来るとは、世界も狭くなったものだ。一瞬で3000〜4000人の人命が失われた。
ツーリング先で衝撃的な事件を目の当たりにしてしまった。9月の長距離ツーリングでは、毎年「何か」が起きていたが、今年はとんでもないことが起きてしまったのだ。一生忘れることのない出来事だ。
翌日以降に判明したことだが、イスラム過激派は計4機の旅客機をハイジャックし、ミサイル代わりにして乗客ごとそれぞれの目標に突っ込んで行った。うち1機は目標に辿り着く前に墜落したので、目標に突っ込んだのは3機であった。それでも4機に乗っていた乗客と乗員は全員死亡している。
このテロには原因があるわけで、その原因を解決しないことにはテロはなくならない。当事者双方に原因がある。しかし熱くなっているアメリカには、「犯人特定→報復攻撃」という考えしかない。これからどうなることやら・・・ 21世紀前半は厄介な時代になってしまうようだ。
亡くなられた方々の冥福を祈ります。 |